「無人航空機操縦者技能証明に係る行政処分に関する基準」(令和7年2月1日施行)の解説

こんにちは、ProFit行政書士事務所の宇賀神です。

今回は2025年1月6日に制定された「無人航空機操縦者技能証明に係る行政処分に関する基準」(以下、「本基準」とします。)について解説をします。
なお本解説は記事執筆時点の情報に基づくものであり、ドローンの飛行に当たっては最新の情報を確認のうえ各自で必要な判断及び対応をお願いします。

「無人航空機操縦者技能証明に係る行政処分に関する基準」とは?

本基準は、以下を目的として制定されています。

  • 航空法に基づく無人航空機操縦者技能証明(以下、「技能証明」とします。)の取消し及び効力の停止(以下、「処分」とします。)を公正かつ適正に行うこと
  • 技能証明を受けたものに対する行政指導を公正かつ適正に行うこと

特に、技能証明の処分に関する航空法(第132条の53 第4項及び第5項)及び航空法施行規則(第236条の61 第4項)の規定をより具体的に示したのが本基準となります。
本基準を理解すると航空法のどのルールに反するとどれぐらいの違反点数となるのか、どれぐらいの違反点数になるとどういった処分または行政指導を受けるのか、が分かるようになります。

(技能証明の取消し等)
第百三十二条の五十三 国土交通大臣は、技能証明を受けた者が次の各号のいずれかに該当するときは、その技能証明を取り消し、又は一年以内において期間を定めてその技能証明の効力を停止することができる。
(略)
 この法律若しくはこの法律に基づく命令の規定又はこれらに基づく処分に違反したとき。
 無人航空機を飛行させるに当たり、非行又は重大な過失があつたとき。
(技能証明の取消し又は停止の基準
第二百三十六条の六十一 国土交通大臣は、技能証明を受けた者が法第百三十二条の五十三第一号に該当するときは、次に掲げる基準に従い、その技能証明を取り消し、又は一年以内において期間を定めてその技能証明の効力を停止することができる。
(略)
4 国土交通大臣は、技能証明を受けた者が法第百三十二条の五十三第四号又は第五号のいずれかに該当するときは、国土交通大臣が定める基準に従い、その技能証明を取り消し、又は一年以内において期間を定めてその技能証明の効力を停止することができる。

処分基準

本基準によると、以下3つの基準により違反点数を決定した上で「処分等区分表」に従い処分又は行政指導(以下、「処分等」とします。)の内容を決定するとしています。
1.の一般的基準により違反点数を決定することを基本とし、2.又は3.に該当する事案があればこれらも考慮して違反点数を最終的に決定することとなります。
ただし、第三者の死亡、重傷又は複数の第三者の負傷の結果が生じた場合には、違反点数にかかわらず技能証明の取消し又は技能証明の効力の停止の処分を行うことができるとしている点に注意が必要です。

  1. 一般的準による違反点数
  2. 個別事情による違反点数の加重又は軽減
  3. 過去に処分等を受けている場合の違反点数の加重

処分等区分表では点数に応じた処分等の内容が以下のように定められています。

点数処分等の内容
1〜2行政指導口頭注意
3〜5文書警告
6〜8処分技能証明の効力の停止3月
9〜11技能証明の効力の停止6月
12〜14技能証明の効力の停止1年
15〜技能証明の効力の取消

「無人航空機操縦者技能証明に係る行政処分に関する基準」の別表2「処分等区分表」を元に著者作成

1. 一般的基準による違反点数

本基準の別表1「点数表」では全部で32の処分事由が示されており、処分事由毎に違反点数が15点から1点まで定められています。
本記事ではこのうち、特にドローン飛行をする際に気をつけてほしい処分事由、理解不足や不注意等により発生しそうな処分事由について解説します。また各処分事由には航空法で罰則が定められていますので、こちらもあわせて解説します。

違反点数15点

処分事由罰則
事故が発生した場合に危険防止措置を講じない
(航空法 第132条の90第1項)
2年以下の懲役又は100万円以下の罰金
(航空法 第157条の6)
アルコール・薬物の影響下での飛行
(航空法 第132条の86 第1項 第1号)
1年以下の懲役又は30万円以下の罰金
(航空法 第157条の8)
飛行計画の変更指示に従わない飛行
(航空法 第132条の88 第2項)
30万円以下の罰金
(航空法 第157条の10 第1項 第11号)

「無人航空機操縦者技能証明に係る行政処分に関する基準」の別表1「点数表」を元に著者作成

違反点数15点の処分事由は3件あります。
15点は一発で技能証明の取り消しとなる処分事由のため、全て解説します。

事故が発生した場合の危険防止措置はドローンを飛ばす者に課せられている最も重い義務の一つです。
危険防止措置として、負傷者の救護や飛行場所・空域周囲への事故の周知等を実施する必要があります。
罰則も重く、処分によっては懲役刑を課せられる場合もあります。

自動車運転と同様に、ドローン飛行においても正常な運転を阻害するアルコールや薬物を摂取した状態での飛行は禁止されています。
かぜ薬や痛み止めなどを服用し、その副作用により正常は運転や判断ができないと感じる場合には、飛行を中止したり運転者を交代するといった判断が必要になります。
こちらも罰則は重く、懲役刑を課されることがあります。

飛行計画の通報後、他の飛行計画や航空機の運行状況等を踏まえ、国土交通大臣から飛行計画の変更指示を受ける場合があります。
このとき、変更指示に従わない飛行を行った場合には違反点数15点となります。
変更指示はDIPS2.0及び登録メールアドレス宛に届きますので、見落としが無いように注意する必要があります。

違反点数14点

処分事由罰則
限定をされた技能証明を受けた者による
限定外の種類・方法での特定飛行
(航空法 第132条の42 第2項)
50万円以下の罰金
(航空法 第157条の9 第7号)
条件付きの技能証明を受けた者による
条件の範囲外での特定飛行
(航空法 第132条の44 第2項)
50万円以下の罰金
(航空法 第157条の9 第8号)
飛行前確認・衝突予防措置を行わないこと
(航空法 第132条の86 第1項 第2号・第3号)
50万円以下の罰金
(航空法 第157条の9 第12号)
他人に迷惑を及ぼすような方法での
公共の場所の上空での飛行
(航空法 第132条の86 第1項 第4号)
50万円以下の罰金
(航空法 第157条の9 第13号)
承認を受けずに行う夜間・目視外・30m未満・
催し上空飛行
(航空法 第132条の86 第2項 第1号・第2号・第3号・第4号)
50万円以下の罰金
(航空法 第157条の9 第14号)
承認を受けずに行う危険物輸送
(航空法 第132条の86 第2項 第5号)
50万円以下の罰金
(航空法 第157条の9 第15号)
承認を受けずに行う物件投下
(航空法 第132条の86 第2項 第6号)
50万円以下の罰金
(航空法 第157条の9 第16号)
飛行の方法について承認外での飛行
(航空法 第132条の86 第3項)
50万円以下の罰金
(航空法 第157条の9 第17号)
夜間・目視外・30m未満飛行において
安全確保措置を講じないこと
(航空法 第132条の86 第4項)
50万円以下の罰金
(航空法 第157条の9 第18号)

「無人航空機操縦者技能証明に係る行政処分に関する基準」の別表1「点数表」を元に著者作成

違反点数14点の処分事由は9件あります。
14点は一発で技能証明の効力の停止1年となる処分事由で、効力の停止処分の中では最も重い処分になります。

飛行前確認については航空法施行規則でドローンの状況、飛行する空域その周囲の状況、気象情報、リモートIDの動作状況を確認することが定められています。また衝突予防措置についても航空法施行規則において、飛行経路やその周辺で飛行機やドローンを確認したときは、安全な間隔を確保する、ドローンを地上に降下させるといったことが定められています。

他人に迷惑を及ぼすような方法での公共の場所の上空での飛行とは、航空法で高長音を発すること、急降下することその他他人に迷惑を及ぼすような方法の飛行と定められています。

その他、飛行許可・承認申請を得ない特定飛行、許可・承認を受けた範囲外飛行も違反点数14点の処分事由の対象となります。

夜間・目視外・30m未満飛行における安全管理措置とは、飛行マニュアルの作成およびその遵守を指します。

これらの事項に対する罰則はいずれも50万円以下の罰金となっています。

違反点数13点以下

処分事由違反点数罰則
機体認証において指定された使用の条件
の範囲を超えた特定飛行
(航空法 第132条の14 第1項)
1350万円以下の罰金
(航空法 第157条の9 第3号)
飛行禁止空域での飛行等
(航空法 第132条の85 第1項)
(航空法 第132条の85 第2項)
(航空法 第132条の85 第3項)
1150万円以下の罰金
(航空法 第157条の9 第9号)
(航空法 第157条の9 第10号)
(航空法 第157条の9 第11号)
飛行計画を通報しない特定飛行
(航空法 第132条の88 第1項)
1030万円以下の罰金
(航空法 第157条の10 第1項 第10号)
機体登録を受けていない機体の供用
(航空法 第132条の2)
81年以下の懲役又は50万円以下の罰金
(航空法 第157条の7 第1項 第1号)
事故発生時の報告をしない又は
虚偽の報告を行うこと
(航空法 第132条の90 第2項)
630万円以下の罰金
(航空法 第157条の10 第2項)
特定飛行を行う場合に
飛行日誌を備えないこと
(航空法 第132条の89 第1項)
610万円以下の罰金
(航空法 第157条の11 第2号)
特定飛行について
飛行日誌の不記載・虚偽記載
(航空法 第132条の89 第2項)
610万円以下の罰金
(航空法 第157条の11 第3号)
特定飛行時に第三者が立ち入った場合に
必要な措置を講じないこと
(航空法 第132条の87)
350万円以下の罰金
(航空法 第157条の9 第19号)
技能証明書不携帯での特定飛行
(航空法 第132条の54)
110万円以下の罰金
(航空法 第157条の11 第1号)
登録事項の変更の届出を行わない又は
虚偽の届出を行うこと
(航空法 第132条の8 第1項)
130万円以下の罰金
(航空法 第161条 第4号)
飛行に当たり非行又は
重大な過失があったとき
1〜10

「無人航空機操縦者技能証明に係る行政処分に関する基準」の別表1「点数表」を元に著者作成

違反点数13点以下の処分事由は20件あります。
このうち、本記事では特に重要なものについて解説します。

機体認証において指定された使用の条件の範囲とは、具体的にはドローンの限界事項を指します。
飛行させるドローンのスペックを事前に確認し、運用限界高度や最大風圧抵抗等の範囲内で飛行させる必要があります。

飛行禁止空域とは、空港等の周辺、緊急用務空域、地表又は水面から150m以上の上空、人工集中地区(DID地区)を指します。

特定飛行を行う場合は飛行計画の通報が義務付けられています。

ドローンを飛行させるためにはまず機体登録を実施する必要があります。
機体登録を完了していないドローンを飛行させると原点の対象となるほか、罰則として1年以下の懲役となる点にも注意が必要です。

事故発生時は国土交通省への通報が義務付けられています。
報告を行わない、虚偽の報告を行うといった行為は違反点数の対象となっています。

飛行日誌はドローンの飛行を行う際に携行が義務付けられています。
データやアプリで飛行日誌を管理している場合は、それらが確認できるPCやスマートフォンを携行していればこの要件を満たします。また、飛行を終えた後は飛行日誌に飛行の記録を漏れなく正確に記載する必要があります。

特定飛行時に第三者が立ち入った場合の必要な措置とは、ドローンの飛行の停止、飛行経路の変更、航空機や地上の火、物件の安全を損なう恐れがない場所への着陸等を指します。

技能証明書を携行しない特定飛行も違反点数の対象です。
また、登録事項に変更が発生した場合にその届出を行わないこと、虚偽の届出も違反点数の対象です。

飛行又は重大な過失についてはどういった事由が対象になるのか、どの程度の原点になるかの具体的な示唆はありませんが、今後制度が運用されていく中で事例が蓄積され、その基準が明確になっていくと思われます。

2.個別事情による違反点数の加重又は軽減

項目内容加重・軽減
行為者の意識重大な悪意又は害意に基づく行為加重3点
行為を行うにつきやむを得ない事情
がある場合
軽減1~3点
行為の態様・結果違反行為等の内容が軽微であり情状を
くむべき場合
軽減1~3点
第三者の負傷の結果が生じた場合加重1~3点
常習的に行っている場合加重3点
是正等の対応速やかに処分事由が生じている状態
の解消を自主的に行った場合
軽減1~3点
処分の対象となる事由につき自主的に
申し出た場合
軽減1~3点
社会的影響刑事訴追されるなど社会的影響が大きい場合加重1~3点
その他上記以外の特に考慮すべき事情があ る場合適宜加減

「無人航空機操縦者技能証明に係る行政処分に関する基準」の別表3「個別事情による加減表」を元に著者作成

個別事情による違反点するの加重又は軽減は、行為者の意識、行為の態様・結果、是正等の対応、社会的影響その他の事情を勘案して決定されます。

やむを得ない事情や違反ん行為等が軽微で組むべき情状がある場合、処分事由の解消を自主的に行った場合や自主的に申し出た場合には違反点数が軽減されます。
一方、重大な悪意又は害悪に基づく行為、第三者に負傷が生じた場合、常習的に行っている場合、刑事訴追されている場合等にには違反点数が加重されます。

3. 過去に処分等を受けている場合の違反点の加重

過去の処分等
口頭注意又は
文書警告
技能証明の
効力停止
技能証明の
取消
今回相当
処分等

 
 

口頭注意又は
文書警告

加重2点加重3点加重4点
技能証明の
効力停止
加重4点加重5点加重6点
技能証明の
取消
技能証明の取消

「無人航空機操縦者技能証明に係る行政処分に関する基準」の別表4「過去に処分等を受けている場合の取扱表」を元に著者作成

処分事由に該当し処分や行政指導が検討される際、過去に処分や行政指導を受けている場合にはその内容によって加重が行われます。ただし、今回の処分事由となる行為が行われた日から5年より前である場合は加重の対象となりません。

施行期日

本基準は今回は2025年1月6日に制定され、2025年2月1日から施行することとなっています。
具体的には、2025年2月1日以降に生じた処分事由に該当する行為を行った者が対象となります。

まとめ

本基準が2025年2月1日から施行されることに伴い、施行日以降は処分事由に該当する行為がないかの確認がこれまで以上に強化される可能性があります。
処分事由はいずれも本基準の施工前から航空法で既に規定されているものですが、これらを十分に把握していなかったり、運用を徹底できていなかった人もいらっしゃるのではないでしょうか。

本基準の制定を契機に、処分事由に関連する航空法の規定の確認やドローンを飛行させる際の体制の点検・見直しをすると良いでしょう。
ドローンを飛行させる皆さんが航空法等のルールを遵守し、安全安心な飛行が日々実行されることを切に願います。

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