「無人航空機の飛行の安全に関する教則」(第4版)の解説

こんにちは、ProFit行政書士事務所の宇賀神です。

今回は2025年2月1日に公開された「無人航空機の飛行の安全に関する教則」(第4版)(以下、「教則」とします。)について解説します。
なお本解説は記事執筆時点の情報に基づくものであり、ドローンの飛行に当たっては最新の情報を確認のうえ各自で必要な判断及び対応をお願いします。

「無人航空機の飛行の安全に関する教則」とは?

教則はドローンなどの無人航空機を安全に運行するために必要な基本的な知識、ルールなどをまとめたものです。
無人航空機操縦士試験の学科試験はこの教則から出題されるため、無人航空機操縦者技能証明の取得を目指す人はこの教則を理解しておく必要があります。また、無人航空機操縦者技能証明の取得をしないドローン操縦者にとってもドローンの飛行に必要な知識やルールを理解するため、教則に記載された内容を理解しておく必要があります。

教則の改訂概要

教則は2022年9月に初版が公開され、その後2022年11月および2023年4月の改訂を経て、今回公開された2025年2月の改訂で第4版となってなっています。
約2年ぶりとなった改訂では以下の内容が改訂されています。
・捜索又は救助のための特例適用の明確化
・第三者及び第三者上空の定義の見直し
・レベル 3.5 飛行の追記
・行政処分等基準の追記
・無線局免許手続規則の一部改正の内容反映
・その他見直し

本記事ではこの第4版で改訂された内容について解説をします。

捜索又は救助のための特例適用の明確化

規則の第3章 3.1.2(2)3)では、国または地方公共団体及びこれらから依頼を受けたものは、事故や災害等に際し、捜索または救助を目的として無人航空機を飛行させる場合には、特例として飛行の空域及び飛行の方法(特定飛行)に関する規制が適用されないとしています。
今回の改訂ではこの特例に該当するケースとして、以下を例示しています。
・大規模災害発生時の捜索または救助
・被災地の孤立地域等への生活必需品の輸送
・危険を伴う箇所での調査・点検
・住民避難後の住宅やその地域の防犯対策のための無人航空機の飛行

また特例飛行に関連する文書として、「無人航空機に係る規制の運用における解釈について」や「航空法第 132 条の 92 の適用を受け無人航空機を飛行させる場合の運用ガイドライン」が紹介されています。より詳しく特例を知りたい人はこれらの文書を読むと良いでしょう。
なお、災害等の対応であっても国または地方公共団体に関わらない独自の活動の場合には、特例の対象にはならず特定飛行の飛行許可・承認が必要となる点に注意が必要です。

第三者及び第三者上空の定義の見直し

第三者

表現の修正が行われているものの、定義そのものは第3版から変更はありません。
今回の改訂で第三者に該当するケースとして、以下を例示しています。
・映画の空撮における俳優やスタッフ
・学校等での人文字の撮影における生徒

第三者上空

今回の改訂で第三者上空に関する説明が新設されています。
第三者上空とはその言葉どおり、第三者の上空を指しますがこの第三者には移動中の車両等(自動車、鉄道車両、軌道車両、船舶、航空機、建設機械、港湾のクレーン等)の上空を含むとしています。

ここでポイントとなるのは「移動中の」車両等としている点です(後述しますが、移動中でない車両等の上空は第三者上空に該当しません)。
なお第三者上空は第三者の直上だけではなく、無人航空機が落下する可能性のある領域に第三者が存在する場合は第三者上空とみなすとしている点に注意が必要です。

また、第三者上空に該当しないケースとして、以下を挙げています。
・第三者が遮蔽物に覆われており、この遮蔽物に無人航空機が衝突した際にこの第三者が保護される状態にある場合(建物や移動しない車両等の内部に第三者がいる場合等)
・移動中の車両等に第三者がいる場合で、レベル3.5飛行として一時的にこの移動中の車両等の上空を飛行する場合

第三者および第三者上空については「無人航空機に係る規制の運用における解釈について」でも同様の記載があるため、より詳しく特例を知りたい人はこの文書を読むと良いでしょう。

レベル3.5飛行

レベル3.5飛行の位置付け

レベル3.5飛行は、レベル3飛行に要求される補助者の配置や看板の設置といった立入管理措置を機上カメラでの確認に代替えすることで、車両等が走行する道路や鉄道等の上空の横断を容易化することを等を目的として2023年12月に新設されました。
レベル3.5飛行によくある誤解として、以下の点に注意が必要です。
・一時的な道路等の横断に限って移動中の車両等の上空を飛行することを許可するものであり、第三者の上空の飛行を認めるものではない
・立入管理措置のうち、補助者の配置や看板の設置等を機上カメラでの確認に代替えするものであり、立入管理措置そのものが不要となるものではない

レベル3.5飛行制度の詳細については航空局の資料をご確認ください。

レベル3.5飛行の実施に求められる安全確保体制等

レベル3.5飛行の実施に当たっては、以下3つの要件へ適合することが必要です。
・機上カメラと地上に設置するモニター等の設備により、進行方向の飛行経路の直下及びその周辺に第三者の立入りが無いことを確認できることを事前に確認していること
・操縦者が無人航空機操縦者技能証明(飛行させる無人航空機の種類、重量に対応したものであって、目視内飛行の限定解除を受けたもの)を保有していること
・移動中の車両等との接触や交通障害等の不測の事態に備え、十分な補償が可能な第三者賠償 責任保険に加入していること

また、要件へ適合していることを示す以下の資料の作成が必要です。これらの資料は申請時の提出は不要となっていますが、航空局から求めがあった場合には提出が必要になります。
・飛行に際し想定されるリスクを十分に考慮の上、安全な飛行が可能となる運航条件等を設定した資料
・無人航空機の機能・性能及び飛行形態に応じた追加基準に関する基準適合状況を示せる資料
・操縦者にかかる飛行形態に応じた追加基準への適合性について、過去の飛行実績又は訓練実績等を記載した資料
・飛行範囲及びその外周から製造者等が保証した落下距離の範囲内を立入管理区画として地図上に示した資料
・想定される運用により、十分な飛行実績(機体の初期故障期間を超えたもの)を有することを示 せる資料

行政処分等基準の追記

2025年1月に制定された「無人航空機操縦者技能証明に係る行政処分に関する基準」に関する説明が新設されています。この基準は2025年2月から施行されています。別の記事で解説をしていますので、そちらを参照ください。

無線局免許手続規則の一部改正の内容反映

無人航空機に用いられる無線設備に、携帯電話(4G、5G)が追加されています。携帯電話が使用する周波数帯や最大送信出力等が教則に追記されています。
また、携帯電話に関する第3版の説明に、携帯電話を無人航空機に搭載して利用する場合には、携帯電話事業者が提供する条件に対応した上空用プラン等の利用手続きを行う必要があることが追記さています。

その他見直し

その他、第3版の内容から細かな記載の加筆・修正・削除が行われています。
第3版からの変更点が航空局の資料にまとめられていますので、これらの詳細を把握したい人はこの資料を参照ください。

まとめ

冒頭で述べた通り無人航空機操縦士試験の学科試験は教則から出題されますが、2025年4月17日(木)以降は第4版の教則に基づく試験を実施することが日本海事協会からアナウンスされています。
今後無人航空機操縦士試験の学科試験会の受験を予定している人は、ご自身の受験タイミングでどの版の教則が対象となっているかをご確認ください。

また今回改訂された内容は、いずれもドローンを飛行させるために操縦者が知っておくべき重要な事項です。
これまでに教則を読んだことがある人も、今回の改訂を教則を復習すると良いのではないでしょうか。

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