こんにちは、ProFit行政書士事務所の宇賀神です。
今回は2025年5月26日にDJIから発表されたMini 4 Proの第二種型式認証について解説します。
なお本解説は記事執筆時点の情報に基づくものであり、ドローンの飛行に当たっては最新の情報を確認のうえ各自で必要な判断及び対応をお願いします。
目次
DJI Mini 4 Proの型式認証取得とは何か
型式認証と機体認証の基礎知識
まず、「型式認証」とは何かを理解しましょう。これは車で例えると「型式認定」に相当します。同一仕様で大量生産される機体の安全性を、型式ごとに国が認証する制度です。
一方、「機体認証」は車でいう「車検」のようなもので、個々の機体が安全基準を満たしているかを確認する制度です。
2022年12月に始まった制度ですが、これまで一般消費者向けのカメラドローンで型式認証を取得した例はなく、今回DJI Mini 4 Proはその先駆けとなりました。
DJI Mini 4 Proの認証内容
今回取得したのは「第二種型式認証」で、認証書番号は「第6号」です。
この認証により、DJI Mini 4 Proは二等無人航空機操縦士資格を有する操縦士との組み合わせで後述するカテゴリーIIb飛行を行う際の個別申請が不要となります。
ドローンの飛行カテゴリー
ドローンの飛行は、そのリスクレベルに応じて以下のカテゴリーに分類されています。
これを理解することで、DJI Mini 4 Proの型式認証取得の意義がより明確になります。
出典:国土交通省
カテゴリーⅠ:基本的な飛行(図の灰色部分)
カテゴリーⅠは、最も制約の少ない飛行形態となります。
以下の飛行の空域および飛行の方法(特定飛行)のいずれにもあたらない場合がこれに該当します。
- 飛行の空域
A.空港等の周辺の上空の空域
B.消防、救助、警察業務その他の緊急用務を行うための航空機の飛行の安全を確保する必要がある空域(緊急用務空域)
C.地表又は水面から150メートル以上の高さの空域
D.国勢調査の結果を受け設定されている人口集中地区(DID地区)の上空 - 飛行の方法
①夜間飛行(日没後から日出まで)
②操縦者の目視外での飛行(目視外飛行)
③第三者又は第三者の物件との間の距離が30メートル未満での飛行(30m未満飛行)
④祭礼、縁日、展示会など多数の者の集合する催しが行われている場所の上空(催し物上空)での飛行
⑤爆発物など危険物の輸送
⑥無人航空機からの物件の投下
この場合、100g以上の機体には機体登録が必要となりますが、飛行許可・承認申請は不要となります。
カテゴリーⅡB:リスクが比較的低い特定飛行(図の水色部分)
カテゴリーⅡBは今回のDJI Mini 4 Pro型式認証が特に関連する重要なカテゴリーです。
25kg未満の機体による飛行に加え、前述の特定飛行のうち以下が該当します。
D.人口集中地区(DID)上空での飛行
①夜間飛行
②目視外飛行
③30m未満飛行
このカテゴリーの飛行には、第三者の上空を飛行しないよう立入管理措置を行うことが条件となります。
通常、カテゴリーⅡBの飛行には国土交通省への許可承認申請が必要ですが、「二等以上の無人航空機操縦者技能証明」と「二種以上の機体認証を受けた機体」を組み合わせることで、許可承認申請が不要となります。
DJI Mini 4 Proの第二種型式認証取得は、まさにここに大きな意義があります。
カテゴリーⅡA:リスクが比較的高い特定飛行(図の緑色部分)
カテゴリーⅡAは25kg以上の機体による飛行に加え、前述の特定飛行のうち以下が該当します。
A.空港周辺の飛行
C.150m以上の高さでの飛行
④催し物上空の飛行
⑤危険物の輸送
⑥物件投下
このカテゴリーの重要な特徴は、「二等操縦者技能証明+二種機体認証」の組み合わせでも、許可承認申請が必要である点です。
つまり、DJI Mini 4 Proの型式認証取得によるメリットは、このカテゴリーには適用されません。
カテゴリーⅢ:高リスクの飛行(第三者上空)(図の赤色部分)
カテゴリーⅢは、第三者上空を飛行する最もリスクの高い飛行形態です。
このカテゴリーには、「一等操縦者技能証明+一種機体認証」が必要となり、さらに許可承認も必須となります。
DJI Mini 4 Proが取得したのは第二種型式認証であるため、カテゴリーⅢの飛行には対応していません。
ドローンユーザーにとっての大きなメリット
1. カテゴリーⅡB飛行の許可申請が不要に
最大のメリットは、カテゴリーⅡBに分類される特定飛行の許可申請が省略できる点です。
具体的には、「第二種機体認証を受けたDJI Mini 4 Pro」と「二等以上の無人航空機操縦者技能証明(ドローンライセンス)」を組み合わせることで、前述した特定飛行のうち以下について、国土交通大臣への飛行許可・承認申請が不要となります。
D.人口集中地区上空での飛行
①夜間飛行(技能証明に夜間飛行の限定解除が必要)
②目視外飛行(技能証明に目視外飛行の限定解除が必要)
③30m未満飛行
これまでこれらの特定飛行を行うには場所を特定しない「包括申請」が必要でしたが、この申請手続きが省略できます。
2. 信頼性と安全性の向上
第二種型式認証を受けた機体は、国が定めた安全基準を満たしていることが証明されています。
これは、ドローンユーザーにとって以下のメリットをもたします。
- クライアントに対する信頼性の向上
- 安全な飛行への保証
- 万が一の事故時における説明責任の一助に
特にビジネスでドローンを活用する場合、この「お墨付き」は大きな価値を持ちます。
3. 機体交換時の手続きも簡略化
DJIカスタマーサポートで機体交換を行った場合でも、製造番号は変更されません(ただし、リモートIDの再インポートは必要)。
また、交換前に第二種機体認証を受けていた場合、交換後も同認証は継続して有効となります。
交換時には「無人航空機適合確認書」が発行されるため、これを飛行日誌の点検整備記録とともに保管しておく必要があります。
実際に第二種機体認証を受けるための手順
型式認証取得済みの機体を購入しても、それだけでは飛行許可・承認申請の省略はできません。
以下の手順で第二種機体認証を受ける必要があります。
- 型式認証を受けたDJI Mini 4 Pro(6月発売予定)を購入
- 機体登録とリモートIDの書き込みを行う
- ドローン情報基盤システム(DIPS2.0)で機体認証を申請(※日本海事協会を検査機関として選択)
- 日本海事協会へ検査申し込み・手数料納入
- 検査合格後、国土交通省から機体認証書が発行される
※重要な注意点として、現在市場にある既存のDJI Mini 4 Proは型式認証取得済み機体ではありません。
認証取得後に生産され、型式名(DJI Model DJI Mini 4 Pro)および型式認証書番号(No. 6)を機体に表示したものが該当します。
これらの機体は6月から発売予定となっています。
各カテゴリーと認証・技能証明の関係まとめ
ドローンの飛行カテゴリーと必要な手続きの関係を表にまとめると以下のようになります。
カテゴリー | 飛行の種類 | 立入管理措置 | 必要な手続き | DJI Mini 4 Pro+ 二等技能証明での申請不要? |
I | 特定飛行ではない | 不要 | 機体登録のみ | 元々不要 |
II B | 25kg未満の以下の飛行 D.人口集中地区(DID)上空での飛行 ①夜間飛行 ②目視外飛行 ③30m未満飛行 | 必要 | 機体登録+飛行許可・承認 または 機体登録+二等技能証明+二等機体認証 | 不要 |
IIA | 25kg以上の全ての特定飛行または A.空港周辺の飛行 C.150m以上の高さでの飛行 ④催し物上空の飛行 ⑤危険物の輸送 ⑥物件投下 | 必要 | 機体登録+飛行許可・承認 (技能証明と期待認証があっても申請が必要) | 必要 |
III | 第三者上空の特定飛行 | 不要 (第三者上空飛行) | 機体登録+飛行許可・承認+一等技能証明+一等機体認証 | 必要 |
この表を見れば明らかなように、DJI Mini 4 Proの第二種型式認証取得の最大のメリットは、カテゴリーⅡBの飛行に対する申請手続きの省略です。
機体認証取得後に守るべきこと
機体認証を受けた後は、以下のルールを守る必要があります。
- 特定飛行を実施する場合、DIPS2.0で「飛行計画の通報」を行う
- DJIが配布する「無人航空機飛行規程」に従って機体を運用
- 同じくDJIが配布する「無人航空機整備手順書」に従って点検整備を実施
- 「飛行日誌」(飛行記録、日常点検記録、点検整備記録)を記録・保管
これらの記録は特定飛行を行う場合だけでなく、全ての飛行について記録することが推奨されています。
記録内容が不十分だと、将来的に機体認証を更新できない可能性もあります。
今後の展望
DJI Mini 4 Proの第二種型式認証取得は、ドローン業界にとって大きな一歩です。
これまで一般消費者向けのドローンでは、このような認証の取得例はありませんでした。
今後は他のメーカーや機種でも型式認証の取得が進み、ドローンの利活用がさらに広がることが期待されます。
特に、ドローンを用いた建物点検、測量、農薬散布、インフラ監視などのビジネス用途において、カテゴリーⅡB飛行の手続き簡素化によるメリットを享受することができます。また、2025年度以降はドローンに関する規制が段階的に緩和される予定であり、今回の型式認証取得はその流れを加速させるものと考えられます。
まとめ:DJI Mini 4 Pro第二種型式認証取得のインパクト
DJI Mini 4 Proの第二種型式認証取得は、以下のような大きなメリットをドローンユーザーにもたらします。
- カテゴリーⅡBの申請手続きの省略: 二等以上の操縦士資格を持っていれば、DID、夜間、目視外、30m未満飛行の許可申請が不要に
- 信頼性の向上: 国のお墨付きを得た機体としての安全性証明
- 機体交換の簡略化: 交換後も機体認証は継続
ただし、これらのメリットを享受するためには、6月以降に発売される型式認証取得済み機体を購入し、第二種機体認証を受ける必要があることに注意が必要です。
また、カテゴリーⅡAやカテゴリーⅢの飛行には、依然として許可承認申請が必要です。
今回の認証取得は、特にカテゴリーⅡBの飛行を行う業務用途での利用を考えている方にとって、導入と運用のハードルを下げる朗報と言えます。
ドローンビジネスに興味がある方は、この機会に検討されてはいかがでしょうか。
【参考資料】
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